雨の塔

雨の塔

やられました。読んでいる間とても幸せだった本です。
陸の孤島のような全寮制女子校に通う4人の少女の話。
百合です。こういう話好きです。
心中とか死とか。
全体的に暗いですが、出てくる小物やダウンタウンの様子など
作者の美意識が感じられます。
特に色の表現が秀逸。
鮮烈な赤や青の記憶が残ります。
とかなんとか偉そうな事書きつつもつまりは私は
矢咲が好きだってことで…!!
ボーイッシュな女の子バンザイ。
ハァハァ…百合風味の作品の、こういう刹那的な空気が好きです。
好みは分かれるだろうけれど
いつまでも同じであり続けることができないからこそ
その瞬間が貴重というか。切ない。
おしむらくはねー…栗本薫の『ウンター・デン・リンデンの薔薇』
みたいなオチを期待してしまうわけで。
もうちょっと重厚に最終的に心中とかの方が好きだよ、と。
百合が書きたいならもっと書けばいいのにぃと思わなくもない。
私の百合の原点が栗本薫だからなぁ。むん。
※以下ネタバレ注意
つまりは小津と矢咲が惹かれあう様子をもっと濃密に描いてほしかったなって。
そうするとこの作品の静けさとかがなくなってしまうのかもしれないけれど。
意外すぎて感情移入する間もなくラストまで突き進んでいったから
読み手としては唐突にすぎると思いました。
でも最後の最後にある救いにはとても救われました。
うん、装丁とか文章とか全体を通してとても素敵な本でした。